地声と裏声の間の声が出ない・かすれる原因|喉の問題ではなく「境目の使い方」が未定着なだけ
地声と裏声の間の声が出ない・かすれるのは、その中間の高さだけ声帯の使い方が定まっていないサインです。原因のしくみと、今日からできる練習手順を解説します。

地声と裏声の間の声が出ない・かすれるのは、多くの場合、その中間の高さだけ声帯(せいたい)の使い方が定まっていないことが原因です。
低い音も高い音も出るのに、ちょうど真ん中あたりで急に声が細くなったり出なくなったりするのは、珍しい症状ではありません。この記事では、なぜこの現象が起きるのかをかみ砕いてから、今日から自宅でできる練習手順を解説します。
「地声と裏声の間」で声が出ないのはよくある症状
低い音は地声でしっかり出せる、高い音は裏声で出せる。それなのに、その中間くらいの高さになると、急に声が細くなる・かすれる・ほとんど音にならない——こうした症状に心当たりがある人は少なくありません。
これは、地声と裏声を切り替える境目(換声点=かんせいてん)付近で、声帯がどちらの使い方をすればいいか迷っている状態です。地声の厚い使い方を続けるには高すぎ、裏声の薄い使い方に完全に切り替えるにはまだ早い——そのはざまで、声帯がうまく振動できずにいるのです。
なぜ地声と裏声の間で声が出なくなるのか
声帯は、低い音では厚くしっかり合わさり、高い音になるほど薄く引き伸ばされていきます。地声と裏声の間の高さは、ちょうどこの「厚い状態」から「薄い状態」へ移り変わる途中にあたります。
ここで声が出にくくなる原因は、主に次の2パターンに分かれます。
- 地声の厚みを保とうとしすぎている:まだ地声のつもりで声帯を厚く合わせたまま、無理にその高さを出そうとすると、声帯が思うように動けず、かすれたり詰まったりします。
- 裏声に逃げるタイミングが早すぎる、または遅すぎる:地声から裏声への切り替えのタイミングがずれていると、その手前で声のエネルギーが抜けてしまい、一瞬「無音」に近い状態になります。
つまり、地声と裏声の間で声が出ないのは、喉が壊れているわけではなく、その高さでの声帯の使い方がまだ体に定着していないサインです。練習で少しずつ、この中間の使い方を体に覚えさせていくことができます。
今日からできる練習|境目をゆっくり行き来する
地声と裏声の間の声を育てる近道は、その境目をゆっくり何度も行き来して、声帯に「中間の使い方」を覚えさせることです。次の手順を試してみてください。
- 軽い「ネイ」で境目を探す(片道5秒を目安に3往復):「ネイ〜」と少し鼻にかかる軽い声で、地声の高い方から裏声の低い方まで、ゆっくりサイレンのように上下します。声が出にくくなる高さがどこかを、まず自分で把握します。
- 出にくい高さで止まって、息を混ぜる(1回5秒×3回が目安):声が細くなる・出なくなるポイントで一度止まり、息を少しだけ多めに混ぜながら「ふー」と声を出してみます。息を足すことで、声帯が薄い状態に移行しやすくなります。
- オクターブでつないで慣らす(1日3〜5回):低い音から1オクターブ上へ、地声から裏声へなめらかに移るように声を出します。境目の高さを通過するときに、力を抜いたまま通り過ぎることを意識します。
NG例として、出にくい高さで大きな声を出そうと力むと、喉が締まってさらに出にくくなります。むしろ小さく、軽い声で境目を探るほうが近道です。うまくいかない日があっても、境目を「行き来する」こと自体が練習になっています。
お手本を聴いてみましょう
男性の声:
ピアノに合わせて、低い音(F#3)から1オクターブ上(F#4)まで「ブー」で音を跳ばしながら昇り、同じ道を下って戻るお手本です。男性の声では、上の音が地声と裏声の境目あたりにあたります。それぞれの音で声が途切れず、息の流れが同じまま鳴っているかに注目して聴いてみてください。
地声と裏声の境目にある声を耳で確かめる
ミックスボイスとの関係
「地声と裏声の間の声」を安定して出せるようになることは、ミックスボイス(地声と裏声の間を段差なくつないだ声)を身につける土台そのものです。声帯の使い方の釣り合いのとり方によって、力強く聞こえる「地声ミックス」寄りになるか、軽やかに聞こえる「裏声ミックス」寄りになるかが変わります(ミックスボイスの定義はミックスボイスとは?で整理しています)。
自分がどちらのタイプに向いているか気になる方は、地声ミックスと裏声ミックスの違い|声の太さで見分ける2つのタイプもあわせて参考にしてください。
より体系的にミックスボイスの練習に取り組みたい場合は、ミックスボイスの出し方【5ステップ】で5ステップの練習方法を解説しています。
境目の使い方が少し安定してきたら、実際の曲で「地声と裏声を短い間隔で往復する」感覚を試すのも効果的です。たとえばTani Yuukiの「W/X/Y」は、KeyTube の音域分析では最低音D3・最高音A#4と、地声から高い声まで幅広く使う曲で、この記事の練習を試す曲の候補になります。
自分の境目がどこか、録音で確かめる
地声と裏声の間で声が出にくい高さは、人によって違います。自分ではどこで声が出にくくなっているか、意外と正確に把握できていないことも多いものです。歌っている最中の自分の声は、体の中を通って聞こえるため、実際にどこで声が細くなっているかが分かりにくいからです。
だからこそ、スマホのボイスメモでかまわないので、低い音から高い音までゆっくり声を出しながら録音し、聴き返してみてください。「思ったより低い高さで声が抜けている」「この音だけかすれている」といった、自分の境目の位置がはっきり見えてきます。
自分の境目がどの高さにあるのかを見極める部分は、耳だけだと判断が難しいものです。
ボイモのようなアプリでは、出している声の高さがその場でグラフに表示され、どのあたりで声が途切れやすいかを確認しながら練習できます。→ あなたの声のクセはどのタイプ?4つの症状と直し方【セルフ診断】
地声と裏声の間で声が出ないのは、練習不足でも才能の問題でもありません。まずは自分の境目がどこにあるかを知り、その高さをゆっくり行き来する練習を続けてみてください。少しずつ、途切れなく声がつながる高さが広がっていきます。



