藤井風の歌い方の特徴|「何なんw」の「ん」を発音しないフェイクと「満ちてゆく」のウィスパーボイスを解説
藤井風「何なんw」の「ん」を発音しないフェイク、「満ちてゆく」のウィスパーボイスと息継ぎ。具体的なフレーズをもとに、脱力ボーカルの技術を分解して解説します。

藤井風の歌声は、「頑張っていないのに芯まで届く」と評されます。その正体は、①息の量を意図的にコントロールするウィスパーボイス、②言葉の子音・母音をあえて崩すフェイク、③地声と裏声の境目を感じさせない声区の移行、という3つの技術の組み合わせです。
この記事では、代表曲「何なんw」「満ちてゆく」の具体的なフレーズを例に、それぞれの技術を分解して解説します。
「何なんw」|「ん」をほとんど発音しないフェイク
サビで何度も繰り返される「何なん」というフレーズ、実はよく聴くと「ん」がほとんど聞こえず「な・な」に近い響きに聞こえます。「ん」は口を一度完全に閉じて鼻に息を抜く音なので、リズムに乗せて連続で発音すると、どうしても歌のグルーヴが重くなります。
藤井風はこの「ん」を弱めることで、言葉の重さを抜きながらリズムのノリだけを残しているように聞こえます。
Aメロの語尾も、そのまま伸ばすのではなく、母音を滑らせるように崩す、ジャズのスキャットに近いフェイクで装飾されているように聞こえます。こうした崩し方は、メロディの輪郭を保ったまま母音だけを滑らせる技術で、原曲の音程・リズムを正確になぞれることが前提になります。
真似するときのポイント:いきなり歌詞を崩そうとすると、ただの聞き取りにくい歌になります。まず原曲通りに「ん」を発音してメロディを正確に歌えるようになってから、語尾の「ん」だけを短く・弱く発音する練習に進むと、不自然にならずに近づけます。
「何なんw」で"ん"の抜き方を耳で確かめる
サビの「何なん」を繰り返すたびに、「ん」の輪郭がどう変化しているか耳を澄ませて聴き比べてみてください。
「満ちてゆく」|間奏明けのウィスパーボイスと息継ぎ
間奏明けの「満ちてゆくー」というフレーズは、声量を上げるのではなく、息の混ざったウィスパーボイス(声帯を強く閉じきらず、息を多めに通して出す柔らかい声)で歌われているように聞こえます。喉に力を入れて声を張るのではなく、あくびをする直前のように喉の奥を軽く開いたまま、息をたっぷり使って声にのせる感覚です。
この曲でもう一つ特徴的なのが、フレーズの区切りごとの息継ぎです。がっつり吸って次のフレーズに勢いをつけるのではなく、鼻から静かに、音を立てずに吸っているように聞こえます。ブレスの音が目立たないぶん、フレーズとフレーズのつながりが途切れず、語りかけるような自然さが保たれています。
真似するときのポイント:ウィスパーボイスは息を多く使う発声のため、口からガバッと大きく吸う癖がついていると、フレーズの後半で息が持たなくなります。
鼻から静かに吸う息継ぎは、腹式呼吸で息の量そのものをコントロールできていることが前提になるため、まずは腹式呼吸のやり方で土台を整えておくと、喉に力を入れずに息を保ちやすくなります。
実際にカラオケで藤井風を歌うなら、低音の効いた発声と跳ねたリズムが特徴の藤井風「きらり」の音域を先に確認しておくと、自分のキーで無理なく歌える範囲が見えてきます。
地声と裏声を"境目なく"つなぐ声区コントロール
藤井風の歌唱を貫いているのは、地声(チェストボイス)と裏声(ファルセット)を切り替える瞬間(換声点)を、聴き手にほとんど感じさせない移行のなめらかさです。多くの人はこの換声点で喉に力が入り、声が詰まったり裏返ったりしますが、藤井風は喉の力を抜いたまま、息の流れを止めずに音程だけを上下させることで、声区の境目を溶かしています。
この「境目のない声」があるからこそ、先述のフェイクやウィスパーボイスを、音程やリズムを崩さずに自在に織り込めるのです。逆に言えば、換声点でつまずいている状態でこれらの技術だけを真似ようとすると、音程が不安定になりやすいので注意が必要です。
自分の声のクセを知ることが近道
藤井風のような脱力した歌い方に憧れても、自分の声が実際にどこで力んでいるのか、換声点でつまずいていないかは、耳で聴いているだけではなかなか気づけません。
歌の練習アプリ「ボイモ」は、自分の録音とお手本を聴き比べて、張り上げや裏返り、息っぽさといった声のタイプからいちばん近いものを選ぶと、そのクセに合わせた練習メニューとお手本音源を使えます。
まずはあなたの声のクセはどのタイプ?4つの症状と直し方【セルフ診断】で今の自分の声の状態を確認してみると、脱力ボーカルへの近道が見えてきます。



